ミュージシャンはクライアントワーカーなのか。過去に生きるか未来を作るか

公開日: : 最終更新日:2018/01/16 作詞作曲法

ミュージシャンはクライアントワーカーなのか

どうも、GANO(@Past_Orange)です。

ツイッター上では職業作家の方を多くフォローして、シェアされる記事も似たようなものが多いです。

先日もこのような記事が流れてきました。


日本のバンド、ポルカドットスティングレイのボーカルである雫さんのインタビュー記事です。

ゲームクリエイターとして就職し会社員として働いた経験が今のバンド活動に繋がっているという内容の記事です。

彼女が優秀なクリエイターかつマーケターであるということがよくわかる記事ですよね。

「”自分の作りたいもの”を作るのではなく、”お客さんが欲しいもの”を提供し続けないと。だってこれは仕事なのだから。ユーザーが求めるものをリサーチしてから手を動かす。ローンチ後もユーザーの声を入念に調べて、次のバージョンアップに反映する。音楽も同じ方法で作っています」

ユーザー視点を持ちものづくりをする、とっても大事なことですよね。

とっても大事なことなんですが、どこか違和感を感じる。

この違和感とはなんなのか? 今回はそこを考えていきたいと思います。

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ポップスとは一体なんなのか?

ユーザー視点を持ちものづくりをすることは大事です。

何が必要とされているかを考え、どのように売れば手にとってもらえるか、クリエイターにとって悩みの種でしょう。

ミュージシャン、バンドも仕事です。ものを売ってお金をもらう。そのお金で生活をする、立派なお仕事ですよね。

そこまではいいのですが、記事内での発言に違和感を感じる。

雫さんは、作詞・作曲のほとんどを手がけるが、その時も「リスナーのニーズ把握」を何よりも大事にしているそうだ。「内から溢れ出る想いや、自分の体験を曲にのせることはない。みんなが欲しいものを作っているだけ」と言い切る。

ここでの”みんな”とはファンや、これからファンになってくれるであろうリスナーのこと。リスナーとここでは表現させていただきますね。

これが職業作曲家なら、クライアントワークなら文句は一切ない。

じゃあ彼女はクライアントワーカーなのか? “みんな”はクライアントなのか?

それは違うと思うんです。

「みんなが欲しいものを作る、自分の想いはない」と言い切ってしまうのは、それはバンドとして良いとは思えません。

“みんな”が欲しいものを作ること、その気持ちも悪くありません。

しかし、それ以外に何もないというのは、果たしてポップなのか?

変わらないで欲しいけど新曲が欲しい”みんな”

ファンの心理として「新曲は出して欲しいけど変わっては欲しくない」というものがあると思います。

これ、実にむずかしい。

全く同じものを作るともちろんダメだし、新しい要素を入れると変わってしまった、1stが良かったと言われてしまいます。

“みんな”が、リスナーが欲しいものってなんなのか? 過去のものですよね。

今まで聴いてきたものが欲しいんですよ。だって安心じゃないですか、変わらないって。知ってるって安心。

でもね、今知ってるもの以外は欲しくないって、成長したくない、視野を広げたくないってことですよ。

現状維持は現状維持でなく退化なんです。時代は流れていくのに同じところにいたら、どんどんと古くなっていく。


こちらの記事では多くの要素について話していてどこを抜粋すべきか迷うのですが

「やらされ感」が出ているものに、もう人は反応しないから。安易で付け焼き刃的なタイアップだったら、むしろやらないほうがマシだという。

ここかなと。

自分の気持ちはなく、みんなが求めることをやる。これってやらされてるってことですよね。

タイアップの話も出ていますね、記事としては真逆だと思うんです。大事なこと書かれてるから通して読んで欲しい。

2018年というこれからを見ているか、それとも”みんな”が求める過去を見ているかの違いなんです。

過去のことだけ、欲しがるものだけを与えるのは、保守的で内向的でつまらないと感じます。

僕も古い音楽は大好きですが、その古い音楽と新しい要素を組み合わせた音楽はもっと好きです。

メジャーデビューは就職と同じなのか?

ミュージシャンは、バンドはお仕事だからニーズに応え自分の意志は反映させない。

この精神があったからメジャーデビューができた、そういう流れの記事になっていますよね。

つまりメジャーデビューするということは、自分の気持ちを殺してリスナーとメジャーレーベルの意向に合わせていくことになります。

自分の意見を言わないと昇進できるよ〜お金のためだよ〜って言われてるんですよ。

自分の意見を持たないニーズ100%のバンドがメジャーデビューし売れていると、売り出す側はもっとそういうものを出したくなりますよね。

すると、今後メジャーデビューするミュージシャンには自分を殺さないと売れないし売り出してもらえないことになる。

憧れだったあの歌手やバンドは、そんな自分のない人たちだったのでしょうか?

ニーズに応えつつも譲らないところは譲らず、タイアップの裏に自分の意見を混ぜ込んで楽曲を世に送り出していたと思うのです。

ニーズ100%=食えていくミュージシャンなら、それは”社畜”というやつではないでしょうか。

企業に勤める会社員だって、ものづくりに自信を持ち作りたいものとニーズに折り合いをつけて働いているはずです。

記事で発言するということは、楽曲を出すことと同じだと思います。

みんな社畜になれよと歌われて、アイロニーではなく本心で言われて、それがメジャーデビューだと。

そう言わざるを得ない状況だとしても、そんな状況を作ってしまったメジャーレーベルに問題があるのではないでしょうか。

「あ、自分たちは逃げ切れる」と思っているからだよ。気分よくトップ層にはいるけど、次の人たちのために何かをするとか、あるいは自分のいる業界をさらに発展させようっていう意欲もなく、ひたすら逃げ切ろうっていうのを多分20年間ぐらい続けているわけだよね。

停滞ですよ。

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ポップとは新しい価値観や考えを与えること

こんなことをツイートしていたら音楽ライターの酒井彩花さん(@ayach___)がリプをくださり、より深く考えることができたので載せておきますね。

みんなが楽しめる曲、大切です。

しかしここでの楽しめるとは、知ってて安心するから楽しめると取れるなと思うんです。

それって、高校の同級生と会って何歳になっても高校の思い出話で盛り上がってるって感じじゃないですか。

いつまでその話してんだよと、これからのことを話さないと。

そう、この記事はファンの目にも止まる。

クライアントワークなんだよ、受動的なんだよと言われてファンはどう思うんでしょう。

最後に僕は星野源と逃げ恥で締めくくってますね。

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」は、世の中の常識に対し「それって無意識にみんなやってるけど本当にいいの?」と問題提起するドラマでしたよね。再放送やってたので改めて見ましたよ。

夫婦ってなんなのか、主婦ってなに。労働力、結婚制度、雇用契約、LGBTQ、人と人の距離。毎話考えさせられる内容でした。

エンディング曲である星野源の「恋」も同じ。

恋することの多様性、夫婦という形をも超えること、自分自身を成長させることを歌っています。

「恋」も「逃げ恥」も、ラブコメやソウルと歌謡曲を混ぜた音楽という古い親しみある要素の中に、新しい考え方、要素を混ぜています。

これこそポップじゃないかと。これが良い大衆音楽なのではないかと。

音楽に限らず、例えば映画でも。

劇場に入った時と出た時で、観た人の心が動き変わる。そんな映画が良い映画だと思うんです。

音楽を聴いて、なんだこれ、なんだか分からないけど心がざわつく!

この感覚を与えること、新しい考えを提示すること、当たり前を当たり前で終わらせないこと。

ウキウキだけじゃないですよ、怒ってもいい、泣いてもいい。何か新しい自分を手に入れられることが大事なんです。

そういった意味で、”みんな”が求めるものだけを出していくのはポップじゃない。

そんな音楽はダメだと、あえてここで強く言っておきたいと思います。

酒井彩花さん、記事を書くきっかけをくれてありがとうございました。

僕とはまた違った切り口での記事を期待したいと思います。

↓GANOが作った作曲ツールです!↓
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最後に

クライアントワークなのか、新しい価値観を提示するミュージシャンなのか。

ここも何を求めるかの違いなのかもしれませんね。

いつまでも昔話はしていられない、温故知新なんだ! というのが僕の意見です。

以上!

GANO

客観視はとっても大事です。



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    作詞曲家・DTMer・WEBライター。DTMを中心に歌モノ・BGMを制作しています。シティポップ系やブレイクビーツなどを好んでます。
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