Vol.125 強進行を繰り返すコード進行を束ねる、半音クリシェが美しい。『Don’t Know Why / Norah Jones』
公開日:
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最終更新日:2018/07/23
ANALYZE GANO's ANALYZE, Norah Jones
Don’t Know Why / Norah Jones
どうも、GANO(@Past_Orange)です。
後悔先に立たず。未練がましいのは女性よりも男性だと、僕自身が思います。女性の方がスパッとしているイメージ。
だから女性が未練が残ると言っていると、相当な相手だったのだなと思うわけです。
今回紹介するのはこの曲!
Norah Jones – Don’t Know Why
Norah Jonesはアメリカのシンガーソングライターです。Jazzを中心に様々な音楽ジャンルを組み合わせたポップスが人気ですね。
2002年リリースのこの曲を含むアルバムは当時大ヒット。日本でも人気になりました。
2002年リリースと聴くと、もっと古くからあったようなと思います。それぐらい古臭くノスタルジックな気持ちになる曲です。
では、歌詞とコード進行を勉強していきましょう!
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Don’t Know Whyの歌詞について
歌詞の一部を引用して見ていきましょう。動画にある和訳も引用していきます。
I waited ‘til I saw the sun
I don’t know why I didn’t come
I left you by the house of fun
I don’t know why I didn’t come
夜明けをずっと待っていたわけですから、喧騒の館に相手を残して帰ったのは夜ですね。
何かのパーティーかでしょうか。恋人を残し帰ったことを後悔しているようです。
When I saw the break of day
I wished that I could fly away
Instead of kneeling in the sand
Catching teardrops in my hand
後悔しているように、夜明けになっても恋人は来なかったみたい。きっと追いかけてきてくれると思ったのでしょう。
一夜の別れのはずが永遠の別れになってしまったようです。
泣き崩れるほどに愛した相手だったのでしょうね。相当後悔している。
My heart is drenched in wine
But you’ll be on my mind
Forever
心をワインで満たしても、ということは実際にお酒を飲んでいることもあるでしょうし、何かに没頭して夢中になって他には何も考えられない状況に自分を追い込んでいるという意味かと思います。
そんな状況でも常に恋人のことがチラつく。どんなに時が経っても恋人を忘れられないでいるみたいです。
ここまでの想いがあるのに復縁することができないのですから、遠く異国へ行ってしまったのかもしれませんね。
もしくは死別かも。男性が歌う失恋ソングも辛いですが、女性の未練が残る失恋ソングも辛いものですね。
ぜひ歌詞を書く際の参考にしてくださいね。
続いて、コード進行との関わりです。
Don’t Know Whyのコード進行について
では、コード進行を見ていきましょう。
ここではイントロ・コーラス・ヴァースとして考えていきます。
イントロ
イントロ1 譜面で
キーエディターで
Don’t Know WhyのキーはB♭メジャーです。
B♭M7→B♭7→E♭→DなのでⅠM7→Ⅰ7→Ⅳ→Ⅲです。
四和音と三和音が混じったコード進行ですが、なぜ前半のB♭M7→B♭7にセブンスがつくのかは後で説明します。
間に挟まれるB♭7とDはノンダイアトニックコードですね。どちらも強進行して次のコードに進みたがるドミナントコードになります。
ドミナントコードが多く含まれるコード進行は緊張と緩和を繰り返すようで力がありますね。
イントロ2 譜面で
キーエディターで
Gm7→C7→F7sus4なのでⅥm7→Ⅱ7→Ⅴ7sus4です。
強進行を繰り返すコード進行です。間のC7はFへ進むためのドミナントコードですね。
最後のF7sus4が特徴的です。
強進行を続ければこのままトニックであるBへ戻ることができますが、sus4コードを使っているためドミナントとしての役割を果たす最も大事な導音(A)が抜けています。
トニックへ戻りたいという強烈な緊張感はなくなったものの、しっとりとした終止ができるようになります。
主音のシ♭もsus4として登場してしまっているので、なおさらドミナントの効果は薄れています。
このような上品で強烈な動きを出したくない曲では、F7sus4のようにあえて導音を抜くやり方もアリなのだということがわかります。
コーラス
譜面で
キーエディターで
コーラスはイントロ1のコード進行の後にこちらのコード進行をつなげる形になります。
Gm7→C7→F7sus4→B♭M7なのでⅥm7→Ⅱ7→Ⅴ7sus4→ⅠM7です。
イントロ2のコード進行の最後にトニックをつけたコード進行です。こちらは終止した形になりますね。
イントロ2の部分で述べたように、F7sus4がドミナントの効果を薄めているためしっとりとした流れでトニックに帰ってくることができています。
ヴァース
ヴァース1 譜面で
キーエディターで
Gm7→C7→F7なのでⅥm7→Ⅱ7→Ⅴ7です。
強進行を繰り返すコード進行です。
イントロ2と似てますね、C7はFへ進むためのドミナントです。
ここではF7sus4ではなくF7が使われています。トニックへ戻りたいという強烈な欲求が発生していますが、ここではトニックには戻りません。
戻らないからこそF7を使っているのかもしれませんね!
トニックに戻る場合では欲求を抑え、戻らない場合では欲求を高める。天邪鬼だと思いませんか?
ツンデレであってスカしている。そこにグッときてしまいますね。
ヴァース2 譜面で
キーエディターで
Gm7→C7→F→F7/E♭→Dm→F/CなのでⅥm7→Ⅱ7→Ⅴ→Ⅴ7/Ⅳ→Ⅲm→Ⅴ/Ⅱです。
ヴァース1の後半部分を大きく動かしたコード進行です。
分数コードの連続ですが、ファとラを押さえたままベースを下降していけばいいだけです。
最後の最後にF7からB♭へと解決してくれるかと思いきや、ここでは逆方向へと進みます。
ファ→シ♭と強進行して欲しいのに、ファ→ミ♭→レ→ドときてコーラスのシ♭へストンと流れ落ちてきます。
してやられていますね。全体を通してオシャレなコード進行が続く楽曲だと言えます。
このコード進行の美しいところ
コーラス部分では四和音と三和音が入り混じったコード進行が使われていました。
ドミナントモーションも多く前に進む力が強いコード進行ばかりなのですが、その流れを統一する”1本の帯”が存在します。
わかりやすくキーエディターで青く表示してみました。トップノートの部分ですね。
コーラス部分では内声でこのような半音のクリシェが行われていたんですね!
強進行でガンガン進むコードたちを優しく束ねる1本の帯、これを作るために四和音が使われていたりします。
この曲が非常に美しいのは、このような仕掛けがなされているからなんですね。
最後に
半音クリシェが非常に美しい1曲でした。
このような仕掛けを組み込むためにテンションノートを加えていくのも面白いです。
その際は他の音とぶつからないようにご注意を。もちろん、あえてぶつけるのならOKですよ。
GANO
繊細なコード進行がたまらない1曲
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