『コード進行と歌詞の関係性』コードの響きに対して発生する気持ちの話。同じ歌詞でもコードの響きが違えば意味が変わると感じます。

コードの響きも表現の１つ

どうも、GANO（@Past_Orange）です。

楽曲を分析するには、歌詞やメロディ、リズムに時代背景などいろいろな要素を考えなければなりません。

その要素の中で僕が一番重点を置いているものは『コード進行と歌詞の関係性』です。ANALYZEコーナーで紹介する楽曲にはその点に注意しながら紹介文を考えています。

今回はコードの響きが歌詞にどのような影響を与えるか考えてみたいと思います。

ここからはすべてルート（根音）をCにし、歌詞は『愛している』として説明します。

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３和音までの響き

コードは３和音までが基本の音、それ以上はテンションノートだという考えでまず良いと思います。

譜面で

キーエディターで

左からC,Cm,Csus4,Cdim,Caug,そして３和音ではないですがCのパワーコード（第３音を抜かしたもの）を並べました。各コードの響きがどんな印象か書いていきます。

1.C　Cは『明るいさ』。ただただ笑顔で落ち着いている印象です。

2.Cm Cmは『暗さ・悲しさ』。悲しいし辛いし、マイナスな印象でもあります。

3.Csus4 Csus4はルートのCと完全音程のF（完全４度）とG（完全５度）でできています。『かっちりとしていてスッキリした気持ち』の印象です。また、Fの音が半音下のCへ行きたくなっているため、『明るい清々しさ』を感じます。

4.Cdim CdimはCmのGがさらに半音下がったものです。なので悲しさに拍車がかかり『どうしようもない絶望感』といった印象です。『ここから抜け出したい、逃げ出したい』と感じます。

5.Caug CaugはCのGがさらに半音上がったものです。ですが、明るさというよりは『何かが起きて訳がわからない状態』という印象です。めっちゃ笑ってたらいきなりビンタされたような。

6.Cパワーコード　これはコードとして表記はないですが、ロックでよく出てくる響きです。第３音がないので明るさも悲しさもないです。『単純・直球』な印象です。

耳で体感してみましょう。上記と同じ順番で弾いています。

そして大事なのが各コードが歌詞に与える感情です。すべてのコードの上で『愛している』と歌った場合

1.C 「愛してます。幸せだね！ウフフフフフッ」

2.Cm 「愛してしまった、あぁ．．．愛は儚くも切ない．．．」

3.Csus4　「愛は正義！！進め！！！！この清き心ぉ〜！！！！！」

4.Cdim　「まさか敵国の姫だったなんて．．．もうおしまいだよぉおおおろろろ〜ん」

5.Caug　「え！！何が起こったの！！こんな感情が．．．あ、い．．．？？！？！？」

6.Cパワーコード　「好きだぜイエーイ！俺はお前がS・U・K・I！これが愛だずぇ〜！！答えはこうだ、イヤァオ！！！」

こんなにも意味が変わるんです。

３和音は混ざりっ気のない１つの感情を表現していると感じます。

４和音までの響き

次は３和音にさらに１音足して４和音にしたものです。

譜面で

キーエディターで

左からCM7,Cm7,C7,CmM7,Cm7♭5,Cdim7と並べました。各コードの印象は

7.CM7 コードCの上にBの音が加わった、もしくはルートCの上にEmが乗っかったコードです。ですので、３和音で説明した1と2が同時に鳴っている状態です。『明るさの中に少しの悲しさ』といった印象です。

8.Cm7　これはCM７の逆の構造で、Cmの上にB♭が加わった、もしくはルートCの上にコードE♭が乗っかったコードです。1と2が同時になっている点はCM7と同じですが、マイナーの響きが先行しているので『悲しさの中に少しの明るさ』といった印象になります。

ここからはCM7とCm7の考え方で分析します。

9.C7　コードCとEdimが同時に鳴っている状態。コードCの明るさが強いためか、Edimの絶望感は薄れて抜け出したい印象だけが残りました。『落ち着くための少しの良い緊張』のような印象です。

10.CmM7　CmとE♭augが同時に鳴っている状態。『いきなり恐怖や不安に襲われた』印象です。

11.Cm7♭5　CdimとE♭mが同時に鳴っている状態。『悲しみのどん底』といった印象でしょうか。

12.Cdim7　CdimとE♭dimが同時に鳴っている状態。『訳がわからなすぎてパニック状態』な印象。訳がわからなすぎると、やはり『不安・恐怖』も湧いてくるようです。

耳で体感してみましょう。上記と同じ順番で弾いています。

各響きに３和音の時と同様に『愛している』と歌った場合を考えます。

7.CM7　「幸せだなぁ〜！あぁ、この愛が永遠ならいいのに」

8.Cm7　「愛しています。愛しているのに、いつか伝わるのだろうかこの愛は。」

9.C7　「伝えるぞ〜！僕の愛を伝えるぞ〜！！行くぞ行くぞ〜プロポーズしちゃうぞ〜！！」

10.CmM7　「え！？好きだって思うだけで罰なんすか〜！！？いや叶わぬ恋だと分かってたから言わずにいたのに、思うだけでも罪なの〜！！！！！」

11.Cm7♭5　「いやちょっと終身刑って。思っただけなのに．．．日記にちょっと書いただけですやん．．．」

12.Cdim7　「わー！！！！『愛している』は宇宙だ！！！『好き』はコスモだぁ！！！コスモ、コスモぉおおお〜！！！」

３和音より複雑な気持ちになっていると感じます。より、奥深い『愛している』に聴こえるのではないかと思います。

４和音は奥深さが出るから『大人っぽさ』を感じるのかもしれません。

テンションを多く含む響き

上記４和音のさらに音を加えていく、もしくは差し引きをしていくとより複雑な感情表現になっていきます。例えば

CM9やC7♭9

譜面で

キーエディターで

CM9はコードC・Em・コードGが同時に鳴っています。明るさと明るさの間に悲しさがあり、『哀愁』があるように感じます。

C7♭9はコードC・Edim・Gdimが同時に鳴っています。『訳がわからなすぎて逆に笑っちゃう』といった印象を受けます。

『愛してる』を各コードで歌うと

CM9　「あぁ、愛しているとも、永遠さ。永遠なんて何も良いことではないのだよ。でも、僕は君を愛している」

C7♭9　「あ〜れ〜花嫁来ないし両親ももうこの世にいないのにあ〜れ〜。ま〜た1人になっちゃったっ。アロ〜ンアゲ〜イン、ナチュラリ〜。あ、塔のてっぺんに上っちゃおうかなぁ〜。ハハハ〜愛してるよ〜」

４和音よりさらに深い感情を表現できていると思います。

テンションコードには渋さや狂気を感じさせることもあるのです。

最後に

コードがどのように歌詞に与えるかを説明してみました。楽曲を耳コピする際に、なぜこのコードにしたのかを考えるときに役立つかと思います。

また、自分で作詞作曲するときにもこのテクニックが使えるかと思います。

ただ、薄っぺらい歌詞にテンションを多く含むコードを合わせれば深く聴こえるということではなく、

深い歌詞にはより深みを与える、直球な歌詞にはより簡潔な印象を与えるためにコードはある

ということを忘れないでください。歌詞・メロディーをおろそかにしてコード進行にだけ力を入れても良い楽曲は作れないということです。手抜きするとバレますよ！

GANO

続編を書きました。
『コード進行と歌詞の関係性』その２。定番のコード進行の使い分けによって同じ歌詞でも意味が違って聴こえます。