Vol.14 短3度上のキーから和音を借用し、スムーズに元のキーに戻るコード進行。『Let Me In / Benny Sings』

公開日: : 最終更新日:2018/07/23 ANALYZE ,

Let Me In / Benny Sings

どうも、GANO(@Past_Orange)です。

映画やドラマなどの物語では、かっこいい二枚目キャラよりちょっとドジな三枚目キャラに惹かれます。

三枚目キャラだからこそ伝わるメッセージがあったりして、グッとくるんですよね。

今回紹介するのは、そんな”三枚目感”がある曲です。


Benny Sings – Let Me In

逆再生MVがいいですね。ビショビショの坊主から熊になるのも笑えます。

Benny Singsはオランダのシンガーソングライター、プロデューサーです。

裏方としてもメインとしてもやれる凄腕です。

ポップな楽曲が多いですが、Hip Hop出身でトラックは結構そっち寄り。AORの匂いもプンプンと、音楽オタク感が伝わってきます。

では、歌詞とコード進行を勉強していきましょう!

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Let Me Inの歌詞について

歌詞の一部を引用して見ていきましょう。

Standing at your doorstep
Ring your bell twice
And now I’m waiting for your love
With from above
Raindrops and moonlight

歌詞の出始めは情景説明から。

相手の家の前で、夜中に雨に打たれてビショビショになりながらドアを開けてくれるのを待っています。

これはなんかやらかしましたね。

I can make you smile again
If you open up for me
But if you don’t allow I’ll just walk away
So tell me girl, what will it be?

どうやら相手は心を閉ざしてしまっているみたい。

ドアの前で口説きが始まります。

でもちょいダサなのが、どうすればいいか聞いちゃうところ。これって女性から言わせると「自分で考えてよ!」なんでしょうが、この駄目っぷりが愛らしいですよね。

If you decide to let me in
I’ll stop the rain from pouring down
If you decide to let me in I’ll make you smile yeah
If you decide to let me in ooh
I’ll bring the sun and let it shine, for you girl
Cause when I’m close to you my heart feels so alive yeah

雨も止めるし太陽も連れてこれる、なんでもしてあげるからもう一度仲直りしようよと口説いています。

結構二枚目な言い回しですが、彼は雨の中ドアの前に立ってる。そのギャップが楽しい歌詞になっていますね。

この後も、喧嘩した日を曖昧に覚えていたり、泣き脅しに入ったりします。

このダサさが癖になります。等身大で、自分を見ているかのような。男性は結構ダサいものですよね。

主人公ではなくてもストーリーがある、そう思わせてくれる歌詞になっています。

歌詞を書く際の参考にしてくださいね。

続いて、コード進行との関わりです。

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Let Me In / Benny Singsのコード進行について

コード進行を見ていきましょう。

イントロ部分はヴァースと同じですので割愛、コーラス・ヴァース・ブリッジと考えていきます。

コーラス

譜面で
lmi1

キーエディターで
lmi2

Let Me InのキーはCメジャーです。

Dm7→D#m7→Em7→FM7→G7なのでⅡm7→#Ⅱm7→Ⅲm7→ⅣM7→Ⅴ7です。

ダイアトニックコードを順番に並べたコード進行ですね、そこにD#m7がねじ込まれています。

D#m7はDm7→Em7を半音でスライドして繋いでいるだけですので、Dm7→Em7→FM7→G7と考えて大丈夫です。D#m7はアクセント程度なんですね。

徐々にスケールを登っていくので期待感が高まるコード進行です。

ヴァース

ヴァース1 譜面で
lmi3

キーエディターで
lmi4

CM7→FM7→Em7→Am7なのでⅠM7→ⅣM7→Ⅲm7→Ⅵm7です。

強進行を多用し、軽快に歩くような流れのコード進行です。

CM7から始まりAm7で終わるこのコードは、物語の語り出しのような印象も受けます。

何かを説明したい時に使えますね。

ヴァース2 譜面で
lmi5

キーエディターで
lmi6

A♭M7→Gm7→Fm7→G7sus4→G7なので♭ⅥM7→Ⅴm7→Ⅳm7→Ⅴ7sus4→Ⅴ7です。

ここでは借用和音が多く取り入れられています。短3度上のE♭メジャーからの借用ですね。

E♭メジャーとして見るとⅣM7→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅲ7sus4→Ⅲ7となりスッキリしていることがわかります。

Cメジャーにスムーズに戻れるよう、CメジャーとEメジャーの共通の音を使ったピポッドコード、G7sus4を挟んでG7へとつなげています。

短3度上のキーからの借用でこのような浮遊感を加えることができるので、一度使ってみてはいかがでしょうか?

ブリッジ

ブリッジ1 譜面で
lmi7

キーエディターで
lmi8

FM7→Em7→Dm7→Em7なのでⅣM7→Ⅲm7→Ⅱm7→Ⅲm7です。

ダイアトニックスケール上を行ったり来たりするコード進行です。

僕はこれを優柔不断コード進行なんて名前をつけてます。

行ったり来たり、解決することなく同じところをフラフラとしているので、悩んでいる迷っている感情を表現するときに有効ですね。

ブリッジ2 譜面で
lmi9

キーエディターで
lmi10

FM7→Em7→Dm7→FM7/GなのでⅣM7→Ⅲm7→Ⅱm7→ⅣM7/Ⅴです。

ブリッジ1の優柔不断コード進行が解決に向かう動きになります。

Ⅳから下ってきてニーゴーと進む、トニックで解決したくなるようなコード進行です。

G7でなくFM7/Gを使うことで”強烈な解決策が見つかったわけではない”感じも出ていますね。ちょっとだけ曖昧な前進です。

とはいえオシャレな進行ですので、ブリッジ1とセットで使ってみてはいかがでしょうか?

↓GANOが作った作曲ツールです!↓
thumbnail

最後に

王道ポップスソング、シンガーソングライターらしい楽曲だと感じます。

三枚目のBenny Singsだからこそ伝わるメッセージ性ではないでしょうか?

ぜひ、コード進行も使ってくださいね。

GANO

Mayer Hawthorneも好きですよね?



仕事依頼thumbnail

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  • gano1
    作詞曲家・DTMer・WEBライター。DTMを中心に歌モノ・BGMを制作しています。シティポップ系やブレイクビーツなどを好んでます。
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