Vol.20 AORのような美しいコード進行と転調と借用と完全音程と。『再見! / がんばれゴエモン』
公開日:
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最終更新日:2017/02/19
ANALYZE GANO's ANALYZE, ゴエモン
再見! / がんばれゴエモン
どうもGANO(@Past_Orange)です。
ゲーム音楽というのは、それだけでジャンル化してしまうぐらい独創的で特徴的です。
多くの音楽から影響を受けつつも、ゲームになじむように工夫がされています。
今回紹介するのはこの曲!
カエル山ステージ「再見!(サイチェン!)」
1998年にNINTENDO64用のゲーム「がんばれゴエモン〜でろでろ道中 オバケてんこ盛り〜」に出てくる楽曲です。
日本を感じる楽曲なのですが、よくよく聴いてみるとそこまで日本らしい要素は入っていなかったり。
ちょっと古臭く、80年代AORな印象も受けます。これはいったい?
では、コード進行を勉強していきましょう!
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再見!のコード進行について
コード進行をづらづらと見ていきたいと思います。
ここではコーラス・ヴァース・セカンドコーラスと考えていきます。
コーラス
コーラス1 譜面で
キーエディターで
イントロ部分はコードではないので割愛。完全5度音程の2声となっています。
完全音程の連続はクラシックでは禁則とされています。それはこのイントロのように強烈なインパクトがあるから。東洋音楽っぽさが完全音程の連続で出ていますね。
さて、再見!のキーはCマイナーになります。ここではとりあえずCマイナー、のちに転調します。
A♭M7→Gm7→CmなのでⅥM7→Ⅴm7→Ⅰmです。
6度から始まりファイブワンと強進行で終止する落ち着きあるコード進行です。
繰り返して使うこともできますし、次に展開することもできます。ある意味個性が出ない平凡なコード進行ですね。
コーラス2 譜面で
キーエディターで
Fm7→Gm7→Cm→C♭aug→E♭/B♭→Cm/GなのでⅣm7→Ⅴm7→Ⅰm→♭Ⅰaug→Ⅲ/Ⅶ→Ⅰm/Ⅴです。
主要三和音を使いフォーファイブワンと終止させつつも、ベースを半音で下降させ色気のある変化を後半に持ってきたコード進行です。
Cm→C♭aug→E♭/B♭→Cm/Gはややこしく見えますが、ミ♭とソを押さえながらベースを動かすだけです。
コーラス3 譜面で
キーエディターで
コーラス1を繰り返したのち、コーラス3になります。
Dm→GなのでⅡm→Ⅴです。
これは同主調のCメジャーからの借用になります。そのままトゥーファイブですね。転調する準備のコード進行です。
ヴァース
ヴァース1 譜面で
キーエディターで
ヴァース部分でのキーはCメジャーとなります。これは一時転調ではなくしっかりとメジャーに転調してますね。
FM7→C/E→Am→C/G→FM7なのでⅣM7→Ⅰ/Ⅲ→Ⅵm→Ⅰ/Ⅴ→ⅣM7です。
分数コードを使うことでメジャーコードを多く使っているコード進行です。明るいですね!
さらにベースラインもなだらかな、横の流れも美しいコード進行だと言えます。
ヴァース2 譜面で
キーエディターで
G→Am→Dm/F→GなのでⅤ→Ⅵm→Ⅱm/Ⅳ→Ⅴです。
5度から始まる珍しいコード進行ですね。
DmのベースをFにすることで強進行を避け、最後のGもセブンスをつけず進行感を出させないようになっています。
ゴールに向かって突っ走る! というよりは、明るく旅をしているような印象でしょうか。ゴエモンらしい感じ。
ヴァース3 譜面で
キーエディターで
ヴァース1を繰り返したのち、ヴァース3になります。
G→Am→Dm/F→G→Gsus4→Fsus4なのでⅤ→Ⅵm→Ⅱm/Ⅳ→Ⅴ→Ⅴsus4→Ⅳsus4です。
ヴァース2の最後にsus4コードを付け加えたコード進行になります。
sus4コードは完全4度と完全5度の響きを合わせたものですよね、これが連続でなると非常に耳がキンキンする。この響きが東洋的だと言えます。
さらにFsus4はGsus4からのスライドで現れますが、これ見事にCマイナーキーになっていますよね。
やや強引ですが、元のCマイナーキーに転調しています。
セカンドコーラス
セカンドコーラス1 譜面で
キーエディターで
コーラスとほぼ一緒ですが、コーラスの流れの最後コーラス3のコード進行に行かずにセカンドコーラス1が来ると考えてください。
Fm7→Gm7→B♭m7→E♭なのでⅣm7→Ⅴm7→Ⅶm7→Ⅲです。
B♭m7→E♭はA♭へ向かうためのトゥーファイブです。Cmが来るかと思いきや借用コード進行が出てくるのでハッとしますね。
内声もミ♭→レ→レ♭と半音で動く、美しいコード進行です。
メロディに対してのリハーモナイズとしても機能していますね。
セカンドコーラス2 譜面で
キーエディターで
A♭M7→Gm7→Cm7→B♭m7→E♭なのでⅥM7→Ⅴm7→Ⅰm7→Ⅶm7→Ⅲです。
コーラス1とセカンドコーラス1を組み合わせたようなコード進行です。
ただしコーラス1と違い、Cm7は終止するためのコードではなくB♭m7→E♭へつなげるためのコード的役割を担っています。だから7thが付いているんですね。
メロディに対するリハーモナイズでもあり、これも美しいコード進行だと言えます。
セカンドコーラス3 譜面で
キーエディターで
Fm7→Gm7→D♭→D♭/E♭なのでⅣm7→Ⅴm7→♭Ⅱ→♭Ⅱ/Ⅲです。
最後のD♭→D♭/E♭はセカンドコーラス1と同様、A♭へ向かうための借用コード進行、ここではフォーファイブです。分数コードとなってリッチな響きですね。
前半部分が4和音のマイナーコードなのに対し、後半が3和音のメジャーコード。急にカッチリした響きになってここでもハッとさせられます。
強烈な終止感が待っていそうな、期待を持たせるコード進行です。
セカンドコーラス4 譜面で
キーエディターで
B♭sus4→B♭なのでⅦsus4→Ⅶです。
まるでB♭メジャーで着地したかのようなコード進行です。
ミ♭→レと半音の動きのみですね、繊細で綺麗です。
そっと落ち着いて終止しているように感じます。
再見!をカヴァーしてみました
せっかくなので、カヴァーしてみました。
アレンジはガラッと変えて、BPMも落として、ちょっと切ないベッドルームポップです。
ぜひ聴いてみてくださいね!
最後に
ゲーム音楽には必ずルーツがあって、この再見!はAORにあるのではないかと感じます。
日本的なようですごい洋風。そこを繋ぐのは完全音程、考えられていますね。
GANO
このコード進行を使ってのオリジナル曲です!
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