映画『君の名前で僕を呼んで』曖昧だからこそ美しい青年の恋。誰もが経験する友情と愛情の境目

公開日: : 最終更新日:2019/01/20 映画

映画『君の名前で僕を呼んで』曖昧だからこそ美しい青年の恋

どうも、GANO(@Past_Orange)です。

2018年4月27日に日本でも公開となった『君の名前で僕を呼んで』を観てきました!

小説『Call Me by Your Name』を原作として製作された映画ですね。

では、まず予告編を観ていきましょう!


『君の名前で僕を呼んで』日本版本予告

17歳と24歳の青年の恋を描いていることがわかりますね。

第90回アカデミー賞にて脚色賞を受賞した作品です。

『君の名前で僕を呼んで』はこんな人にオススメ!

どんな人が『君の名前で僕を呼んで』を楽しめるか考えてみました。

・20歳を越えた男性
・10代の子供がいるお父さんお母さん
・イタリアの美しい風景に酔いしれたい人
・男性同士の恋にときめく人

こんな感じ。

まず20歳を越えた男性、中学生とか高校生の頃を思い出して観ていただきたいですね。大なり小なり、このぐらいの年齢でこのような感覚ってあった気がするんですよ。

そして10代のお子さんがいる人。息子に限らずですね、娘でもいる人は観ると、親としてどうあるべきかが描かれているので参考になると思います。

さらに風景に酔いしれたい人。もうめちゃめちゃ映像綺麗ですね、イタリアの田舎なのかな? ここで夏を過ごしたいな〜って思うほど自由で綺麗。

最後に男性同士の恋にときめく人。BL好きな人とも表現できますね。美しい青年2人の恋を描いていますので、良いと思います。

ちなみに日本語吹き替え版ですと、声優の入野自由さんと津田健次郎さんが青年2人を演じています。予告編のみですがナレーションは櫻井孝宏さん。


『君の名前で僕を呼んで』日本語吹き替え版予告

良い声だな!

ではネタバレを含んだ感想を載せていきますね!

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『君の名前で僕を呼んで』 愛されたいという気持ちはなぜ生まれるのか?


出典:YouTube

『君の名前で僕を呼んで』は17歳のエリオと24歳のオリヴァーと恋に落ちるお話です。男性同士の恋ですね。

男性同士の恋ではありますが、エリオやオリヴァーが初めから同性愛者であったわけでもないし、これから同性愛者として生きていくわけでもありません。

本作は同性愛を主軸にしつつ、愛情とは何かを扱っている映画だと僕は思っています。

“好き”の反対は”無関心”

出会って間もなくは知的で見た目も美しいオリヴァーに嫌悪感を抱いているエリオ。

オリヴァーの話し方や立ち振る舞いが気に食わないとあからさまにイライラしています。自分のペースを乱されてますよね。

“好き”の反対は”無関心”であって”嫌い”じゃない。”嫌い”は”好き”に近い感情なのかもしれません。

エリオがオリヴァーの話し方や立ち振る舞いに苛立ってしまうのは、それだけ目で追って聞き耳を立ててしまっているから。

興味があり強く惹かれるからこそ気になってしまうんですよね。エリオは序盤は自分のその感情に気がつかない。なのでお互いに攻撃的な振る舞いをしてしまうんです。

これって逆もありますよね。好きな相手とずっといると、もっと知りたいと距離を詰めすぎてしまって嫌な部分も見えてしまう。誰でも嫌な部分はあるのに、好きだからこそ目立って見えてしまうものです。

この嫌悪感は仲良くなりたいという気持ちの裏返し。それに気づいたのか、エリオは少しオリヴァーに歩み寄ります。

親友のような兄弟のような安らぎ

エリオがオリヴァーに向ける感情は不安定に変わっていくわけですが、それが初めは恋人に抱く愛情とは違ったものだったのかもしれません。

オリヴァーには自分の内面を教えたいし知って欲しい。自分のことを理解して欲しい。誰よりも仲良くして欲しい。そんな感情ですよね。

まるでそれは親友のような、男同士の強い友情のように感じます。

または男兄弟のような、両親には恥ずかしくて言えないこともお兄さんには言えちゃう、そんな感覚だったのだと思います。

親友であり兄弟である距離感の、自分より知的で魅力的な人といるときの安らぎをエリオはオリヴァーに感じていたのでしょう。

相手に対する自分の気持ちがわからなくなる時期

エリオとオリヴァーの関係は、同性愛であると簡単に片付けることはできません。

エリオは女性のマルシアと寝るし、オリヴァーも結婚(女性とするような雰囲気)をします。男性が好きだからお互いを愛したわけではないんですよね。

知的で美しくミステリアスなオリヴァーにエリオ、エリオにオリヴァーは惹かれたんです。

それは兄のようだから、親友のようだから、恋人のようだからとくぎれるような感情ではありません。

それぞれは感覚は違えど同じ愛情で、グラデーションのように境目が曖昧なんですよね。

自分の気持ちがわからずエリオは苦しみますが、その苦しみがエリオの人生をもっと豊かにしていくのでしょう。

曖昧で不安定、だからこそ美しい17歳の複雑な感情を描いた作品でした。

『君の名前で僕を呼んで』 なぜ自分の名前で相手を呼ぶのか?


出典:YouTube

「君の名前で僕を呼んで、僕の名前で君を呼ぶ」。映画タイトルにもなっているオリヴァーの言葉です。

エリオはオリヴァーのことをエリオと、オリヴァーはエリオのことをオリヴァーと呼ぶ。

一体なぜこのような呼び方をするのでしょう?

自分の名前で相手を呼ぶ唯一の存在

エリオのことはみんなエリオと呼びますよね、そりゃ名前なんだから。

名字でパールマンさんと呼ぶ人もいるだろうし、あだ名で呼ぶ人もいるでしょう。

でもエリオのことを「オリヴァー」と呼ぶのはオリヴァー以外いないでしょう。一生で1人だけです。

自分のことを「オリヴァー」と呼ぶ唯一の存在、オリヴァーにとっても同じですね。

自分の名前で好きな人を呼ぶのって、きっととっても恥ずかしいですよね。

恥ずかしいけど、好きな人を呼ぶことができるなら何度でも叫ぶことができる。

恥ずかしくむず痒い特別な感覚を共有できる唯一の存在に、エリオとオリヴァーはなったんです。

お互いが2人から1人になるような感覚

エリオとオリヴァーはお互いを知的で賢く美しい存在だと思っていました。憧れている部分もあったのでしょう。

あんな風に魅力的になれたら、相手自身になれたなら。そう感じていたはず。

呼び名を変えることでエリオはオリヴァーに、オリヴァーはエリオになったんです。

エンドロールとともにエリオの泣き顔が流れますよね。そして最後にお母さんが「エリオ、エリオ」と呼ぶ。

エリオにとってみれば自分のことを呼んでいるようで、オリヴァーのことを呼んでいるようでもある。

オリヴァー自身になっているような、2人で1人になっている感覚。

もっとも近く、ずっと寄り添っているような感覚になっているのかもしれません。

それはとっても幸福なことであれば、映画の最後では辛いことのようでもあります。

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『君の名前で僕を呼んで』 誰もが大なり小なり通る不安定で美しい感覚


出典:YouTube

誰もおおっぴらに言わないことではありますが、誰だってエリオやオリヴァーのような感覚を味わっているはず。僕もありますよ。

強い友情や憧れが、その域を越えて、恋人に感じる”好き”なのではないかという感覚です。

多くの人が10代の不安定な時期にこの感覚に陥るのではないでしょうか。

多くの人は恋ではないと割り切りますが、エリオとオリヴァーのように恋に落ちる人もいる。

それは何も悪いことではないですよね。

不安定であることが悪いことのように言われがちですが、この映画では美しいことだと表現しているように僕は感じます。

美しくまっすぐなだけに、その痛みも大きい。強い悲しみを抱えてエリオは成長するでしょう。

親の愛情も感じ取れる映画である

エリオが報われているのは、両親がその感情に優しく寄り添ってくれたこと。

決して直接的な言葉は使いませんが、エリオとオリヴァーが愛し合っていることを認めているとしっかりエリオに伝えてくれます。

お父さんのパールマン教授は、自分にもそういった時期があったと話してくれます。

多くの親は早くその感情がなくなればと、30歳になる前になくなって欲しいと願うこと。

そして自分自身もいけない感情だとどこかで抑えてしまったこと。

でもエリオがオリヴァーに抱く感情を肯定していると伝えてくれる。どうなろうと息子を愛すると目を見て伝えてくれます。僕はね、この両親の愛情にも泣きそうになりましたよ。

何かと人の目と自分の目が厳しい世の中ですから、自分の子供にだけはたっぷりの愛情を注いであげたいですよね。

『君の名前で僕を呼んで』 音楽の美しさが涙を誘う


出典:YouTube

『君の名前で僕を呼んで』の音楽も実に心地よく、感情を揺さぶってきます。

83年イタリアを舞台とした音楽、ピアニストでもあるエリオの感情を表現するピアノのみの楽曲などなど。

特に3曲、スフィアン・スティーヴンスの楽曲は流れ出した瞬間に涙を誘います。


Sufjan Stevens – Mystery of Love (From “Call Me By Your Name” Soundtrack)

Sufjan Stevens – Visions of Gideon (From “Call Me By Your Name” Soundtrack)

映画を観た後に聴くとより泣けてきますね。あぁ〜、悲しい〜!!

↓GANOが作った作曲ツールです!↓
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最後に

美しく優しく、が故にめちゃめちゃ悲しい映画でしたね。

言葉にできない感覚を映像と音楽で表現してくれた映画でした。

結婚したのかと思ったって不安と冗談の混じったエリオのけしかけに、婚約したと答えるオリヴァー。あぁ、エリオ。辛すぎる、、、

GANO

80年代ポップカルチャーに染まろうぜ



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    作詞曲家・DTMer・WEBライター。DTMを中心に歌モノ・BGMを制作しています。シティポップ系やブレイクビーツなどを好んでます。
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