映画『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』 ダンケルク・スピリットここにあり。ドアの開閉音は爆撃のメタファー?
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最終更新日:2019/01/20
映画

映画『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』 ダンケルク・スピリットここにあり
どうも、GANO(@Past_Orange)です。
2018年3月30日に日本でも公開となった『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』を観てきました!
第二次世界大戦時のイギリスを舞台とした映画ですね。
では、まず予告編を観ていきましょう!
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』90秒予告編
チャーチル首相就任からダイナモ作戦までを描く作品ですね
アカデミー賞ではゲイリー・オールドマンが主演男優賞、辻一弘さんがメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』はこんな人にオススメ!
どんな人が『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』を楽しめるか考えてみました。
・歴史好きな人
・社会派映画が好きな人
こんな感じ。先週紹介した『ペンタゴン・ペーパーズ』と似てしまいましたね。
やっぱり史実を基に作られた映画ですので、歴史好きな人は楽しめます。
そして政治家を中心として話が進みますので、戦争映画としながらも戦闘シーンはありません。爆撃がちょろっと入る程度でして、基本は会話のみです。
アクションよりも人々のやりとりを眺めていたいという人はぴったりですね。
ではネタバレを含んだ感想を載せていきますね!
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『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』 ダンケルク・スピリットはこうして生まれた
「We Shall Never Surrender(私たちは決して降伏しない)」で有名なウィンストン・チャーチル。彼の首相就任から約4週間を描いた映画となっています。
副題に「ヒトラーから世界を救った男」とついているのでついつい英雄のお話なのかと思いがちですが、内容はウィンストン・チャーチルがどのような人だったかという、人物紹介的な部分が多いですね。
第二次世界大戦開戦後、危機的状況に追い込まれたイギリスが急遽仕立てた首相といった感じでして、嫌な役を押し付けられた人物というスタートです。
就任直後からどんどんと状況は悪化していき、追い詰められた状態から始めなければいけなかったチャーチルの苦悩が伺える内容ですね。
とはいえ、降伏せず和平交渉もせず戦うことをチャーチルが選んだことで、連合国が勝利する結果となりました。
ダンケルクに追い詰められたイギリス・フランス兵たちが約30万人生還できたのも、チャーチルがダイナモ作戦を指示したからですね。
「どんなに絶望的な状況であっても、一致団結し決してあきらめない」という「ダンケルク・スピリット」はここから生まれました。
映画内では最後の最後でチャーチルは英雄になるわけですね。力強い演説が国民に勇気を与えたのです。
嫌われ者が国民の英雄になるまでの4週間を描いた映画となっているわけですね。
この「ダンケルク・スピリット」とウィンストン・チャーチルについてイギリスではその後も語り継がれているんだとか。根強く残っているんですね。
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』でのドア開閉音
チャーチルがどんな人物でどんな状況下で決断を下したかに注目する映画でして、その状況下を表すのに使われているのが「ドアの開閉音」だと僕は感じました。
この映画、やたらとドアの開け閉めが多い! 車のドアをドタンバタン、部屋と部屋を渡ってはドタンバタン、トイレに入ってドタンバタン。
ドアを挟むごとに変わる音響も気になっちゃう部分です。
ドアの開閉音と変わる音響で表現していることは、たった一枚の板の向こうではまったく違う世界が広がっているってことではないでしょうか。
まじかにまったく違う性格、違う意見を持った人たちが集まっている。こんなに近いのにまったく違う。
そのまったく違う人たちを行ったり来たりしてつながなくてはいけないのが首相であるチャーチルの役目だったんですよね。
国民の声、秘書の声、大臣の声。様々な声を聞きつつ全ての責任を負わなければいけない立場をドアの開閉音で表現していると感じました。
さらにもう1つ。ドアの開閉音は「戦場の爆発音」も表現していると感じました。
チャーチルのいるウェストミンスターは就任直後戦場とはなっていませんが、指揮をとっている場所と考えれば戦場ですよね。
政治家たちが会議をしている最中、チャーチルが悩んでいる間にも多くの命がドイツ軍による爆撃で亡くなっています。
その爆撃をドアの開閉音によって表現していると思うのです。決して離れた安全な場所ではなく、同じ戦場であるとドアの開閉音で表現しているのではないでしょうか。
ドアの開閉音に注目して見返すと違った面白さがあるかもしれませんよ。
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』と合わせて観たい映画
史実を基に作られた映画ですので、他の映画と合わせて観るとより時代背景が見えてきて面白いんですね〜。
合わせて観たい3作品をご紹介。
ダンケルク
やはりダイナモ作戦を指示した映画ですので、戦場側の恐怖も味わうと良いでしょう。
『ウィンストン・チャーチル』は部屋の中の会話ばかりですが、『ダンケルク』は真逆! ほぼ言葉なしで攻撃から逃げるだけの映画となっています。
表裏どちらも感じると戦争の悲惨さがわかると思います。戦場にいる人たちはめちゃめちゃ怖いよ。
記事も書いてますのでぜひ読んでみてください。
英国王のスピーチ
英国王としてジョージ6世が出てきます。彼が国王となるまで、そしてその生い立ちを観ることができるのが『英国王のスピーチ』です。
『ウィンストン・チャーチル』ではベン・メンデルソーンが演じていますが、『英国王のスピーチ』ではコリン・ファースが演じています。
吃音症とその立場に苦しむ英国王が描かれていますので、『英国王のスピーチ』を観た後に『ウィンストン・チャーチル』を観ると印象が変わるかもしれませんね。
イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密
第二次世界大戦でドイツ軍が使用していた暗号機「エニグマ」の解読に試みたアラン・チューリングを描いた作品です。
作中には首相であるチャーチルとの関わりも出てきますし、『ウィンストン・チャーチル』や『ダンケルク』でも描かれた勝利の裏にある犠牲の部分も表現されています。
戦場とは違う場所で戦った人たちを描く映画ですね。かなり面白いです。
『ウィンストン・チャーチル / ヒトラーから世界を救った男』とブレグジット
ここはちょっと僕のひねくれた感想部分。
『ダンケルク』もそうですが、今ダイナモ作戦を描く映画を作ることは何を意味するのかって部分なんですね。どんなメッセージがあるのか。
ナチスは仮想EUなのではないかなと思えてきたんです。
作中では「どんなにイギリスにとって好条件を提示されても、ドイツには降伏しない」といった考えが国民からも挙げられています。
どんな絶望的な状況に陥っても、私たちはイギリスとして戦う。これってEU離脱派の考えにも聞こえます。
今こそ団結して離脱後もやっていこう! そんなメッセージなのでしょうか?
はたまた、チャーチルが今生きていたらEU残留派だったという考えもあります。
ではまったくの逆で、ヨーロッパ諸国一致団結して、この困難を乗り越えていこう! というメッセージにも取れなくありません。
2016年のEU離脱を問う選挙では残留派と離脱派でほぼ半々だったことを思うと、今こそダンケルク・スピリットが必要なときですよね。
残留か離脱、どちらとなろうともイギリス国民として一致団結、困難を乗り越えていこうということが言いたいのかもしれません。
最後に
「We Shall Never Surrender!」がいつ叫ばれるのか待ってしまうような作品でしたね。
ゲイリー・オールドマン、もうチャーチルそのものでした。目はゲイリー・オールドマンでしたがね、当たり前か。
歴史のお勉強にも役立つ作品でした。
GANO
2018年の日本にドンピシャ?!


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