映画『グリーンブック』友情は下らないルールを壊していける。批判も含めて差別を考えるきっかけに
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映画
映画『グリーンブック』友情は下らないルールを壊していける
どうも、GANO(@Past_Orange)です。
2019年3月1日に日本でも公開となった『グリーンブック』を観てきました!
1962年の人種を越えた交流を描くロードムービーですね。
では、まず予告編を観ていきましょう!
【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告
黒人差別を軸に正反対の2人の交流を描く作品ですね。
アカデミー賞の作品賞など多くの賞を受賞しています。
『グリーンブック』はこんな人にオススメ!
どんな人が『グリーンブック』を楽しめるか考えてみました。
・人種差別を扱った作品に触れたい人
・重い作品よりコメディで軽く楽しみたい人
・おじさん2人のやりとりが好きな人
こんな感じ。
まず人種差別を扱った作品に触れたい人。触れたいって感じで、まだ全然わかんないんだけど、考えていきたいなって人にオススメ。
そしてライトに楽しみたい人。人種差別ってとても重たいお話なので辛い時もあるんですが、本作はコメディなのでずっと笑って観られますよ。
最後に、素敵なおじさま2人のやりとりが好きな人! 僕もね、好きなんですわ。憧れるね。いいよね、おじさん2人のロードムービー。
ではネタバレを含んだ感想を載せていきますね!
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『グリーンブック』 黒人差別だけでない、様々な立場を写す
予告編や表立った宣伝は白人と黒人の交流を描くという部分が大きく取り上げられています。まるで黒人差別のみを扱った作品のようです。
ピアニストのドクター・シャーリー(ドク)は黒人で、白人のトニー・リップは差別的な態度を取るが最後は仲良しに。そんな作品に見えがち。
ですが本作はもうちょっと複雑。
まずトニーですが、黒人だけでなくアジア系も差別しています。そしてユダヤ系も差別しています。白人以外は見下している感じですね。
1962年はまだジム・クロウ法があり有色人種はトイレお店が別にされていた時期です。COLOREDなんて書かれているのはそのためですね。
そんな差別意識バリバリのトニーですが、イタリア系なので差別的な発言も受けます。する側でもありされる側でもあったんですよ。
1900年前イタリアから職を求めてアメリカに多くの人が移り住んできた歴史があり、イタリア系というだけで貧しい移民として差別されてきたんです。
トニー自身が話すように貧しく仕事がない状態も多いんですよね。その日暮らしな生活が本作でも表現されています。
正反対にドクはクラシックの英才教育を受け教養もお金もある富裕層。
トニーに対してややしつけるような、少々上からな発言も目立ちます。これは富裕層と貧困層の価値観の違いを扱っています。
イタリア名であるバレロンガは発音しにくいから名前を変えろという展開がありますが、結構な差別発言ですよね。
ピアノの才能を見出されてレニーグランド音楽院で初の黒人生徒となった話をドクがしますが、ここがまた複雑。
レニーグランド音楽院はロシアの国立音楽院でして、ドクはアメリカでの黒人とは交流があまりない存在として描かれています。
差別意識の強いアメリカ南部にて、白人の運転手を連れたタキシードの黒人は、同じ黒人からも白い目で見られます。
かつドクはバイセクシャルであるという描写も含まれています。同性愛者であるだけで警官から暴行を受け逮捕されている場面がありましたよね。
白人と黒人の交流、というだけでなく様々な人種差別、貧困層と富裕層、LGBT差別を描いた作品なんです。
結構重いテーマなんですけど、それを軽やかにコメディとして扱った部分が多くの人に受け入れられた要因ですね。
『グリーンブック』 マハーシャラ・アリの演技が最高
上記のように複雑な問題をコミカルに扱った本作ですが、なんといってもマハーシャラ・アリの演技が最高!
黒人であり富裕層でありロシアで英才教育を受けたピアニストでありバイセクシャルという超複雑な役どころを見事に演じています。
農地で働く黒人を眺めるシーンでは、何も言わずに複雑な心境を表現しています。
そんな静かな演技もあれば、雨の中”白人でも黒人でも人間でもない私は一体何者なんだ、どう生きるのが正解なんだ”と声を荒げ訴えるシーンもあります。
このシーンかなり辛かったですね。どこにいってもマイノリティで心を許せる相手がいない孤独なピアニストなんですよね。
才能があっても不公平なルールと意識の有ろうと無かろうと向けられる差別の目に耐え続けなければいけない立場は、僕ら島国である日本で育ったものにはわからないほどのストレスだったと思います。
黒人差別を平然としつつも教養ある人間と見られようとドクの演奏に拍手する白人たちに、それをわかって毎回笑顔で会釈する表情も、複雑で魅力的でした。
あとピアノを弾くシーンでがっつり演奏してましたね! だいたい手と顔を別撮りしてピアニストが弾くんですが、本人が弾いていたのには驚きました。
しかも何曲も演奏していて、もちろん音は差し替えるんでしょうが違和感なく弾いていてすごかったですね。
アカデミー賞助演男優賞は納得です。
『グリーンブック』 批判も含めて考えるきっかけに
幅広く受け入れられている本作ですが、実は批判する人も多くいます。アカデミー賞作品賞には不適切だーという声が多いですよね。
というのも、主役が差別意識バリバリのトニー側ですし、脚本・制作がトニーの息子ニック・バレロンガなんですよ。
どんなに差別されようと品格を保ち暴力を振るわないドクを中心に描くのではなく、悩める黒人を助ける白人としてトニーを主役に置いた部分に批判が高まっているんです。
人種差別の少ない日本に住んでいるとわかりづらいですが、アフリカ系アメリカ人はドク自身なので批判しますよね。
かつアカデミー賞作品賞ですから。
この状況って本作中で描かれる、差別意識は(無意識下でも)あるけど差別をしない教養ある人間だと思われたいがためにドクの演奏を聴きに来る白人たちと同じなんですよ。
差別を利用して白人はやっぱりえらいと言いたい、そんな風に写ってしまう作品でもあります。
ボコボコになるドクをトニーが助けるシーンがかなり多かったせいかなと思います。
そんな批判も含め、入門編としてまず本作を楽しんでもらって、また別の人種差別を扱った映画を観て考えてみてはいかがでしょうか。
最後に
ドクもトニーもかっこいいですよね。素敵なおじさまになりたい。
2人のやりとりがコミカルで爆笑、かつ要所要所で泣かせてくる素敵な作品でした。
ラストのトニー家にドクが訪ねて来るシーンはハッピーな気持ちでいっぱいになりましたよ。
GANO
トニーが住むNYの約10年後を描く作品です。
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