映画『テネット』 “ドア”はいつも入口で出口だ! 映像体験で小難しさも楽しみに変えてくれるノーランマジックにニヤニヤが止まらない
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最終更新日:2020/10/03
映画
映画『テネット』 “ドア”はいつも入口で出口だ! 映像体験で小難しさも楽しみに変えてくれるノーランマジックにニヤニヤが止まらない
どうも、GANO(@Past_Orange)です。
2020年9月18日に日本公開となった『テネット』を観てきました!
時間軸を弄りまくってとうとう時間から脱出するそうですよ、今回のノーラン
では、まず予告編を観ていきましょう!
映画『TENET テネット』本予告
今回はスパイアクション! そこに時間軸が絡んでくるようです。
なんでそんなややこしいことしたいのって笑っちゃいますね! 大好きだ
映画『テネット』はこんな人にオススメ!
どんな人が『テネット』を楽しめるか考えてみました。
・クリストファー・ノーランが好きな人
・タイムトラベル・タイムループ物が好きな人
・自分の知識が追いつかないことに興奮する人
こんな感じ。
クリストファー・ノーランって映画ジャンルだから! なので賛否両論あるのは当たり前、だってジャンルだから。刺さる人にももろクソ刺さる。
タイムサスペンスなのでタイムトラベル・タイムループ物好きだと楽しめます。ただし、これはどちらでもない!
最後に知識が追いつかないことに興奮する人。私このタイプ。何かに詳しく熱心に喋ってる人見ると興奮しません? その感覚を映画でやる変人ノーラン。
おっと、映画観る前にネタバレじゃないけど知っておいた方が面白くなるって部分がありまして。
物理学の知識をチラッと入れておきましょう。用語が出てきた時に「む、むりだぁ、、、」とならないために。なんとなく知っておきましょう!
ではネタバレを含んだ感想を載せていきますね!
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『テネット』 私たちはすでに回転ドアと時間の逆行を手にしている!
未来人とはなんなのか? ニールとは? 逆行って何? みたいな話はパンフレットにビッチリ書いてあります! 絶対買ってね。
ネットにも解説考察が山盛り出ているし、私は物理学の博士号を持っていないのでここでは話しません。
大切なのは、映画から何を感じ取ったかということ。
何度でも言いますが、良い映画とは観る前と観た後で自分が変化する映画のことです。『テネット』はもちろん良い映画。
主人公の名前はなんと”名もなき男”!(protagonistの意味は主人公)
前作『ダンケルク』に続き、また概念的な存在だとも言えます。名もなき男は主人公であり、これから世界を変える人であり、私たち自身です。
しかも今、感染症対策で常にマスクをつけているでしょう? 危険だからとマスクをつけて外に出る瞬間は、まさに逆行の世界に踏み入れた名もなき男そのもの。
前に走っている(ように見えている)車は、本当はバックしているのかもしれない。ふと見上げたビルはさっきまで崩壊していたかもしれない。
私たちは今、その状態を観測しただけに過ぎません。その車は信号で止まる、ビルはいずれ壊れる(壊される)と言われて驚かないですよね、それって未来から時間を逆行してきて(無自覚に)知っているからかもしれないですよ?
もしかしたら、劇場のドアは”回転ドア”だったのかもしれない。作中ではわかりやすくガラス越しに順行と逆行のドアを写していましたが、回転ドアに乗っている人はその場を移動している感覚でしかないですからね。
ドラえもんのどこでもドアってありますよね。ドアを通れば全く別の場所に移動できる超欲しいアレ。
私の家のドアは、もしかしたらどこでもドアで、その場にあると思っている部屋は、本当はどこか別の空間なのかもしれません。
通れば別の場所に一瞬で移動できるドアですが、その一瞬という時間を費やして移動しているわけです。確実にそこには時間の消費がある。
移動という言葉を使う以上、変化を表しているわけで、変化するということはプラスもしくはマイナスがあるということ。その値に2分の1をかけていっても、絶対に0にはならない。
その移動時間の消費が、ドアを使わずに移動する場合の時間と同じだけ必要になる、ただし時間軸は逆転する、そんな世界が『テネット』です。
自宅のトイレのドアを閉めた瞬間、アレさっきトイレ行ったんじゃなかったっけってなる時ありますよね。あれ、シャンプー2回目だっけ、みたいな。
デジャブ、既視感はもしかしたら、体験した時間を逆行し、また順行に戻って追体験しているからかもしれません。対消滅しなくてよかった!
もしくはある場所に行くと、子供の頃に来た思い出が(新しい記憶から古い記憶に向かって)蘇る感覚、これも『テネット』的です。
私たちはもう、無自覚にアルゴリズムと回転ドアを使っているのかもしれない、そんな感覚に陥らせてくれる素晴らしい映画です。
Mayer Hawthorne ‘Where Does This Door Go’
『テネット』私たちは未来人と同じ道を歩むのか?
未来人って不思議な言葉です。時間で人を区別しているわけですから、明日の私は未来人です。でも明日になったら現在人。なにそれ
名もなき男も漏れなく未来人。でもアルゴリズムを使い世界の逆行を起こそうとする未来人と戦う存在でもある。
地球にはもう未来がないと知っているのは同じはず、なのに彼は戦います。
名もなき男のように、未来がないと知りながらも、逆行する力を持ちながらも、戦うことが私たちはできるでしょうか?
前々作『インターステラー』のように新たな地球を求めて宇宙に飛び出る勇気と忍耐を持って行動できるでしょうか?
今、地球温暖化が進み夏は暑く台風被害は増えるばかり。地球が滅びゆく存在であると薄っすら気が付いているはず。では今、その未来を変えようと戦っているでしょうか?
50年後の私は未来人です、おじいちゃんですね。ということは、今の高齢者は50年前から見て未来人。アジズ・アンサリみたいなこと言ってみる
今、私たちは未来人と対峙しているんです。未来がないから過去の人(若い人)がどうなろうと私たちが生きていければ良い、と考える人たちとの戦いが続いているのです。
俳優陣の年齢、セイターが高齢で妻のキャット含め阻止しようとする集団が皆30代(20代もいる!)なのも、未来のない高齢者 vs 未来を切り拓く若者の話になっていると考えられます。
現在人と未来人の戦いって聞くと、未来側が強く感じますよね。この日本においても少子高齢化で、政治家も高齢で、あまり若い世代が生きやすい世界だとは思えないですよね。高齢者や政治家の全員が悪いって言いたいわけじゃないよ
過去も現在も未来も地続きで、全て”今”なんだ。だから今戦わなくちゃいけないんだ!
って言われているような気がします。クリストファー・ノーランが時間をこねくり回す映画を撮り続けるのは、後回しにしたところで何も変わらない、時間なんて考え無くしちまえと言いたいからなんじゃないかなって。
名もなき男は私たち。作中のように、得体の知れない何かであっても立ち向かい希望を持って戦えと、メッセージが込められていると感じました。
後退すんな、前向けってノーラン映画共通のメッセージですからね。言いたいことはいつも一緒なんだね
未来の環境を考え今何するのか、という観点で『魂のゆくえ』は『テネット』と近い映画だと言えます。オススメ!
『テネット』の新しさは音楽のスピード感と俳優のチャーミングさにある
いつものノーラン映画なんだけど、また1つ前進したなと感じた部分がありまして。
毎度タッグを組むハンス・ジマーが多忙なため、音楽はルドウィグ・ゴランソンが担当しています。
映画において(それ以外もだけど!)音楽は超重要。印象がガラッと変わります。
ハンス・ジマーの音楽は重低音とパーカッシブなシンセが印象的ですが、ルドウィグ・ゴランソンは更にスピード感がある。このバトンタッチ、高齢者から若者に未来を譲った別世界線にも思える
もちろんハンス・ジマーも大好きなんだけど、ルドウィグ・ゴランソンの音はエネルギッシュで突っ走る若者を感じて大好きです!
このルドウィグ・ゴランソンという人、映画音楽だけでなくラップ・ミュージックも手がけているんですよね。チャイルディッシュ・ガンビーノのパートナー的立場、今回はトラヴィス・スコットだったけど
ラップ・ミュージックと時間の操作は相性が良くて、サンプリングした音を早めたり遅めたり逆再生したり、まさに『テネット』なことをやってきたのがラップ・ミュージック(かつてのヒップホップ)なんです。
ハンス・ジマーはロック、ルドウィグ・ゴランソンはラップ、ノリが違うんですよね。
この音楽の変化が映画をよりスピーディーにしたと感じます。『テネット』ってラップ・ミュージックなんだよね!
The Pharcydeの『Drop』、スパイク・ジョーンズが監督したMVがあるんですが、これなんか『テネット』そのもの。
The Pharcyde – Drop
逆回転で曲を流し、ラップもメンバーに逆回転で覚えさせて、動きも逆になるようにしてる。順行と逆行が同時に流れる、ヘンテコなMV。『テネット』そのものでしょ?
ノーランもCG使わず、わざわざ俳優陣に逆再生の動きをやらしているので、こんなヘンテコでややこしい映画が撮れているんです。手間だな!
“You know what time is it?”ってことなんだよね。
変わったのは音楽だけでなく、俳優陣、というより主人公の人柄。
今までのノーラン映画の主人公は、死にギリギリ耐えているような疲弊した存在でした。見てるとこっちの顔も渋くなるような、そんな人物。
それが『テネット』の名もなき男はそうじゃない! どことなくコミカルでチャーミング。逆行弾の説明聞いて、何それみたいな顔も笑える
相棒のニールもどことなく抜けてて、凄腕でカッコいいんだけど愛らしい。
2人で息止めしながらドア開けるシーンとか、今までのノーラン映画では無かったチマチマしたやりとりが笑えます。ルパンと次元みたいな
今まで無かったというか、『インセプション』でのアーサーとイームスがコブを差し置いて主役になったような、そんな変化があります。
その変化を感じるためにも、何度も劇場行きたくなっちゃいますね!
『テネット』 鑑賞後に再び観たくなる映画やドラマ
今まで出てきた映画に加え、観直したくなる映画を。
ノーラン映画なら『メメント』『インセプション』『インターステラー』ですね。他もだけど
多くのノーラン映画の主人公は、愛する人を亡くして後ろ向きで。そこから前に進んでいこうとする(そのつもりでそうじゃないこともあるけど)人物だったんですが。
名もなき男は逆。キャットと出会い、利用しつつも守ろうと親密になっていく。だからこの後、キャットはどうなるのかなって。そこも妄想しつつ、この3本観直したい。
未来から来て過去を変えようとする、それって『ターミネーター』『ターミネーター2』だよね! ってのは言われてますよね。(amazonに1がない!)
パパは自分より年下って意味がわかりませんよね、その矛盾がセットなのがタイムトラベル。祖父殺しのパラドックス!
クリストファー・ノーラン的には『007』をやりたかったんでしょうが、どちらかと言うと『ミッション・インポッシブル』な印象です。しかもゴースト・プロトコル
どこかで誰かが世界を救ってる。で、どこかちょっと可笑しい。この楽しさはゴースト・プロトコルでしょう。
そしてここでも『メッセージ』を推したい。愛するドゥニ・ヴィルヌーヴの名作です。
時間が前も後ろ無くなって円になる、現在と過去と未来は平行にあるという考えは『テネット』と近いものを感じますね。
未来で助けて欲しいので過去に言語を教えに来た宇宙人、また違う世界線での名もなき男とニールかも。
あとはバック・トゥ・ザ・フューチャーシリーズね!
過去変えると自分が消えていくって表現しながら、別の世界ができるとか言い出したり。そんなヘンテコな部分も含めて観直したい。
こうやって並べてみると、『テネット』はわかりやすいお話だってわかりますね! 違うのは映像と音楽!! そこがすごいんだよ『テネット』は。
最後に
こんなの矛盾だらけでありえなくて子供騙しだねって言ってしまうのは、もったいない。だって矛盾しているかありえないかどうかは、今の常識から見ての話だから。
未来から観たら、結構あるあるネタかもしれませんよ?
そんなことより、こんなややこしい映画が映画業界、劇場の未来を背負っているって変ですね!
コロナ禍で配信に向かったディズニーと、絶対に劇場だと踏ん張ったノーラン。『ムーラン』は劇場で観たかったよ。
感染症対策を万全にしつつ、『テネット』2回目観に行きますね!
GANO
シームレスな体験はどこかゲーム的?
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