Vol.29 嘘もホントも酸いも甘いも、すべて僕のことなんだ。優しく寄り添って歌う『フィルム / 星野源』

公開日: : 最終更新日:2018/07/23 ANALYZE ,

フィルム/星野源

どうも、GANO(@Past_Orange)です。

4月より星野源の所属事務所がカクバリズムからアミューズへかわりました。変化には良いも悪いも付き物ですが、そんな彼を今回は取り上げます。

俳優としても活躍している彼、MVでの演技もなんら違和感ありませんね!

さて、このフィルムという曲、MVにあるようにゾンビの歌なのでしょうか。

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歌詞について

星野源の楽曲は一貫して『身近にある些細なこと』が歌われていると感じます。

 

「アーティストは雲の上の星のような存在、だからこそ憧れる」ということもあるかと思いますが、彼は『スター』というよりは『横に寄り添ってくれるお兄さん』な存在です。僕たちが生きているなかで感じるちょっとした出来事にタイトルをつけて歌ってくれます。

このフィルムは『嘘とホント、辛いことと嬉しいこと』についての素朴な歌です。

笑顔のようで 色々あるなこの世は 綺麗な景色 どこまでほんとか
フィルムのような 瞳の奥で僕らは なくしたものを どこまで観ようか

笑っているけれど、心の中では表情と違ったことを思っているよねと歌いだします。

フィルムは映像を記録して再現するものです。ですから、2行目は思い出をどこまで思い出そうかということです。事実だとしても、自分の都合のいいように嫌なことは端折って思い出してたりしますよね。

どんなことも 胸が裂けるほど苦しい 夜が来ても すべて憶えているだろ
声を上げて 飛び上がるほどに嬉しい そんな日々が これから起こるはずだろ

胸が裂けるほど苦しくて夜も眠れないこともあるけどさ、飛び上がるほどに嬉しいこともきっとあるから。と優しく歌ってくれます。ホントかよ源!!泣いちゃう

どうせなら 作れ作れ 目の前の景色を そうだろ

どうせ1度の人生なら、自分の都合の良いように解釈してしまえよ、そんなもんだろ?と言ってるかのよう。

 

どこか見栄を張ってしまったりつく必要のない嘘をついてしまったり。目の前の風景を見て昔のことを思い出したり。

嘘とホント・今と昔は表裏一体なんだから、好きなようにしたらいいよという歌詞になっていると僕は感じます。

辛いことがあっても、それは良いことがある前触れみたいに思ったらいいんじゃない?そうすれば少し楽になるよ。と、言われてるかのよう。とっても優しい歌です。

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コード進行とメロディについて

彼の作る曲はコードチェンジが激しいものが多いので、どこを抜粋しようか迷ってしまいますね!

film1
※C♭dimと表記してありますが、正しくはC♭m♭5です。

Aメロの後半部分の4小節です。カッコ内はBメロに行く場合とAメロを繰り返す場合で違うので空白にしました。

注目すべきは画像2小節目にあるC♭m♭5(Bm♭5)。ベースラインがA♭→B♭→Cと上がってきたところを引っ張られるかのようにC♭を通りB♭に戻ります。

このC♭dimが出る部分は3回とも『どこまで』と歌詞がなっています。ディミニッシュの不穏な印象を与える響き、そして引っ張られるかのように折り返し下降するベースライン。

 

どこまでホントでどこから嘘なの?どうしたらいいんだろうという悩みの感情がこのC♭dimに込められている気がします。この半音クリシェがたまりませんね!!

film2

これはサビの部分です。注目すべきは3小節目のメロディに出てくるD♭の音!楽曲を通してこの音が出てくるのはサビのこの部分だけです。

ラ♭・シ♭・ド・ミ♭・ファのペンタトニックで作られているメロディでここだけレ♭が出てきます。ここにあえてペンタトニックを離れる気持ちの変化があるわけだ!!

この部分では苦しみ・嬉しさ・痛みを歌っています。ドレ♭ドレ♭と半音で揺れる感情、震える声できっと良いことがあると言い聞かせているような印象を受けます。少しだけみせる本音のような部分でしょうか。良い...

 

他にもメロディが飛躍する部分や♭5が出てくる部分など面白いところがいっぱいある楽曲ですので、コピーしてみると勉強になりますよ!

コード進行からの作曲

こちらのコード進行を使ってBGMを作ってみました。

ロイヤリティーフリー、フリーダウンロードです!2次使用にどうぞ!

フリーBGM素材「Film Clash!」by GANO DOVA
「Film Clash!」by GANO ニコニ・コモンズ

最後に

優しく語りかけるような歌ですが、内容はたっぷりです。ディミニッシュの使いどころを探しているときは、こんな使い方をしてみてはどうでしょうか?

 

余談ですが、このフィルムがカラオケで一番気持ち良く歌える。キーがピッタシなんですよね。あと堀江淳のメモリーグラスも歌いやすいよねー。

GANO



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  • gano1
    作詞曲家・DTMer・WEBライター。DTMを中心に歌モノ・BGMを制作しています。シティポップ系やブレイクビーツなどを好んでます。
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