Vol.137 スモーキーな雰囲気を出すために、1つのコード進行に代理コードを詰め込んだ。『A.G.I.T. / Suchmos』
公開日:
:
最終更新日:2018/07/23
ANALYZE GANO's ANALYZE, Suchmos
A.G.I.T. / Suchmos
どうも、GANO(@Past_Orange)です。
今あるこの世界がもし作られたものだったら、そう考えると怖くなりますよね。ここ、マトリックスです。なんて。
与えられた価値観の上で踊らされているだけなんじゃないか? そんな疑問を抱いたことがある方は、この曲に共感するかも。
今回紹介するのはこの曲!
Suchmos “A.G.I.T.”
Suchmosの2017年1月25日にリリースされるアルバム「The Kids」のリードトラックですね。
スモーキーでロック色の強い楽曲となっています。渋いですね〜!
では、歌詞とコード進行を勉強していきましょう!
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A.G.I.T.の歌詞について
歌詞の一部を引用して見ていきましょう。
Turn It On 迷いは無い
眠れない夜にDancin’
体温 わからないくらい
溶けて煙になって
Turn it onはスイッチを入れるですね、動き出して見せつけるという意味もありますが、ここでは誰かに見せるというより自分自身を解き放つような意味に感じます。
踊りだすと体が熱くなりますが、さらに動いて煙のようにフワフワと漂うような感覚までいって体温さえ分からないぐらい錯乱している状態です。危なっかしい。
高く飛びたい yeah
青い鳥のさえずりの聞こえないとこ
繰り返される「Hi, I’m Fine More Get High」でもあるように、高く飛びたいわけです。実際に飛びたいのではなく、ここではハイな状態になりたいと歌っていると感じます。
煙のように漂って、炎のようにゆらゆらと、空を飛んでいるような、海を漂っているような、ハイな状態。
なぜそんな状態になりたいのか? それは青い鳥のさえずりを聞きたくないからですね。
青い鳥は幸せを運んでくると言われています。
運んでくる、自分から幸せになったのではなく誰かに与えられた幸せだと感じているのではないでしょうか? そんな他人の価値観での幸せはいらないから、もっと高く飛びたい。そんなメッセージを感じます。
追記。「『青い鳥のさえずり』はツイッターのことでは?」という意見も頂きました! 確かに、ツイッターでのクソリプやガセネタを嫌がった発言にも考えられますね。今だからこその歌詞とも取れます。
@Past_Orange
いつも楽しみに拝見させております!
この曲の解説の箇所で「青い鳥のさえずりの聞こえないとこ」と、ありましたが、それはtwitterのことなのではないかと思ったのですがどうでしょうか?— さくら (@platium12345) 2017年1月15日
あと「Hi, I’m Fine More Get High」はHiとFineとHighがかかっていて気持ちいいですね、口に出したくなるフレーズです。
Zion On My Mind
ザイオンが気になるよ〜って意味ですが、このザイオンは何でしょうかね?
イスラエルの地名というよりは、映画「マトリックス」に出てくる街の方だと僕は思います。
今の世界は作られた世界だ、マトリックスなんだ。ザイオンがあるんじゃないか気になって仕方がない、そんなメッセージを感じます。
「くだらん嘘 吐かなくてもいい」のフレーズも、世の中に対し悲観的であると感じさせます。
建前や上辺ばかり、与えられた幸せ、作られた世界。こんなとこからはおさらばだ、もっと高く飛んでやる。
そんな現実からの逃避行を歌った曲なのではないでしょうか?
歌詞を書く際の参考にしてくださいね。
続いて、コード進行との関わりです。
A.G.I.T.のコード進行について
では、コード進行を見ていきましょう。
楽曲は1つのコード進行のみでできています。
譜面で
キーエディターで
A.G.I.T.のキーはCマイナーになります。
Cm→G♭m7♭5→Cm/F→Fm/B♭→C♭augM7/GなのでⅠm→♭Ⅴm7♭5→Ⅰm/Ⅳ→Ⅳm/Ⅶ→♭ⅠaugM7/Ⅴです。
分数コードの多いややこしいコード進行ですね。
CmからFへ飛べば強進行ですから前進する勢いがでますが、それだと楽曲のイメージに合わない。
なので間にG♭m7♭5を入れた感じです。強進行の勢いと明るさを殺しつつ、内声をソ→ソ♭→ファ・ミ♭→ファ♭→ファと2箇所半音で動かすことができます。怪しさを出せていますよね。
Cm/F→Fm/B♭とベースは強進行しますが、Fm→B♭7だとこちらもわかりやすく明るすぎて楽曲と合わないので、分数コードを用いて情景をぼやかしています。
そして注目すべきは、ここまでドの音が常に保留されたままだってこと! G♭m7♭5でもレ♭♭として保留されたままです。常にドが鳴っている状態。
その保留音が最後のC♭augM7/Gで半音下がります。C♭augM7/Gという怪しい響きがより強調されますね!
しかもベースはド♭ではなくシ♭を通って頭のCmへ進みます。ピアノとベースがずれて鳴ることで不協和音になることを避けていますね。
キーエディターでは幅の都合上、C♭とB♭が隣に置いてありますが、実際に使う際は離してくださいね。じゃないと濁りが強すぎるので。
C♭augM7/GはG7の代理です。代理ばかりが使われているコード進行なんです。
なので、このコード進行をシンプルにすると、Cm→Fm→B♭7→G7ですね。強進行の多い、マイナーキーですが明るめなコード進行になります。
この感じも悪くないですが、楽曲のスモーキーな雰囲気に合わすために代理コードが使われているんですね。
最後に
与えられた幸せなんかには満足しないぜ、ありきたりなんて真っ平御免だ、そんなメッセージが歌詞とコード進行から感じ取れます。
スモーキーでクールな楽曲でした。
GANO
車のCM曲としても使われているSuchmos
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