Vol.121 一時転調とコードのスライドによって気持ちの高ぶりを表現する1曲。『Don’t Take Your Time / Roger Nichols & The Small Circle of Friends』
公開日:
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最終更新日:2018/07/23
ANALYZE GANO's ANALYZE, Roger Nichols & The Small Circle of Friends

Don’t Take Your Time / Roger Nichols & The Small Circle of Friends
どうも、GANO(@Past_Orange)です。
日本では90年前後で起こった渋谷系ブームというものがありました。
今回紹介する曲は、その渋谷系の元となるサウンドを持った1曲です。
Roger Nichols & The Small Circle Of Friends – Don’t Take Your Time
Roger Nicholsが1968年に作ったソフト・ロックと呼ばれる曲ですね。
Roger NicholsはソングライターとしてCarpentersに楽曲提供していたりするので、名前を聞いたことある方も多いと思います。
渋谷系の定義は明確ではないですが、ストリングスやホーンセクションを多用したアレンジをポップスに織り交ぜた楽曲、といったところでしょうか。
聴いてもらえると、Don’t Take Your Timeは渋谷系の”元ネタ”だということがわかると思います。
では、歌詞とコード進行を勉強していきましょう!
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Don’t Take Your Timeの歌詞について
歌詞の一部を引用して見ていきましょう。
I know what I have got to do
Got to find a way to make you love me
And I know just what to do
If ever you find your fake and love me
歌詞の区切る場所が難しいですが、僕なりに切っています。
片思い中の歌でしょうか。全力で口説きにかかっているのがわかります。
Don’t fail to let me know
I’ll be waiting here
No matter how late the time when we met
You know I made up my mind to concentrate
On just feeling a lot to you
愛に気づいたら必ず教えてね、ずっと待っています。そんな感じ。
「君だけを想い続ける」など、かなり一途な印象を受けますね。
明確な場所や情景は出てこないので、心境のみを永遠語っている形です。
I can hardly wait so now please
Don’t take your time
気持ちが高ぶるあまり要求がエスカレートしてますね。
待ってると言いながらも、早くしてくれとせがむ感じから愛の強さが伺えます。
Now the night is right to discover love
Can it be it’s you here beside me
ここでやっと少しだけ情景が見えます。夜だったんですね!
もうすでに隣にいて口説いている模様。高ぶる愛を全力で伝えている情景が見えましたね。
コーラス部分で心境をガッツリ伝え、ヴァースでさらっと情景を見せる。そのような歌詞のバランスになっています。
歌詞を書く際の参考にしてくださいね。
続いて、コード進行との関わりです。
Don’t Take Your Timeのコード進行について
コード進行を見ていきましょう。
ここでは、コーラス・ヴァースとして考えていきます。
コーラス
コーラス1 譜面で
キーエディターで
Don’t Take Your TimeのキーはDメジャーになります。
Bm7/E→Bm7/A→F#m7なのでⅥm7/Ⅱ→Ⅵm7/Ⅴ→Ⅲm7です。
いきなり分数コードから始まるこの曲、ややこしいですよね。
コード進行の機能としてはベースラインのニーゴーサンと考えて大丈夫です。
Bm7/EはEm7(9,11)と考えることもできます。Em7より複雑な響きです。
Bm7/AはBm7からベースをスケール上で順番に下っていく段階で使われています。
ベースがEから強進行してAに行く流れと、コードがBm7から下っていく流れの2つが重なったコード進行だと言えます。
そして4小節ではなく3小節で区切れるコード進行。これはメロディにも影響してきますね!
コーラス2 譜面で
キーエディターで
Em7→F#m7→Bm7→F#m7→Bm7なのでⅡm7→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅲm7→Ⅵm7です。
コーラス1が3小節で区切れたので、コーラス2は5小節で1セットです。
Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅵm7のニーサンロクでできたコード進行です。最後にⅢm7→Ⅵm7を再度くっつけたという形ですね。
マイナーコードのみを使って落ち着いた印象を与えるコード進行です。
コーラス3 譜面で
キーエディターで
GM7→GM7/A→F#m7→Bm7なのでⅣM7→ⅣM7/Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm7です。
ヨンゴーサンロクのよく使われるコード進行です。GM7/Aのみ分数ですが、A7の代用ですね、ちょっと上品に聴こえます。
ヨンゴーサンロクは順序立ててしっかり説明されているような、礼儀正しいコード進行のように僕は感じます。
コーラス4 譜面で
キーエディターで
Em7→Em7/A→DM7なのでⅡm7→Ⅱm7/Ⅴ→ⅠM7です。
ニーゴーイチの定番コード進行ですね。強進行を使い勢いがあります。
A7でなくEm7/Aを使うことで上品な響きに変えていますね。
これは好みであり、メロディが先にあるならぶつからないようにするテクニックだとも言えます。
ヴァース
ヴァース1 譜面で
キーエディターで
F#M7→BM7なのでⅢM7→ⅥM7です。
ここでは一時転調が行われています。長3度上のF#メジャーへの転調ですね。
場面転換を表現する際にこのような長3度上への一時転調は有効です。
本来Ⅲm7→Ⅵm7であるものがどちらもメジャーセブンスコードになるので明らさまに違いがわかります。
お、明るくなったな! と心境の変化が伝わるコード進行です。
ヴァース2 譜面で
キーエディターで
F#M7→BM7→F#M7→GM7なのでⅢM7→ⅥM7→ⅢM7→ⅣM7です。
F#M7→GM7が半音でスライドする形になっており、気持ちの高ぶりが伝わりますね。
実際には一時転調から元のキーへ戻ってきただけなのですが、ドンドンキーが上がっていくような錯覚を覚えます。
ヴァース1での一時転調で「お、明るくなったな?」、ヴァース2のメジャーセブンスコードのスライドで「おお! さらに明るくなった!」と2段階で明るさを表現している曲です。
さらに間奏部分で半音キーが上がりコーラス1の部分がDメジャーからE♭メジャーになります。
E♭メジャーにて同じことを繰り返すのですが、曲を通して聴くとかなりキーが上がったような錯覚を覚えます。
気持ちを高ぶらせるコードテクニックが詰まった1曲ですね!
最後に
めっちゃ転調してテンションアゲアゲに感じる1曲でしたね!
渋谷系、そしてシティポップ好きにはたまらないのではないでしょうか?
影響受けちゃいますね!
GANO
この曲も好みのはず!


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