映画『ブラックパンサー』を観た子供たちは橋を架けるか壁を築くか。社会問題を抱える現代へのメッセージ

公開日: : 最終更新日:2019/01/20 映画

『ブラックパンサー』を観た子供たちは橋を架けるか壁を築くか

どうも、GANO(@Past_Orange)です。

2018年3月1日に日本でも公開となった『ブラックパンサー』を観てきました!

アメコミヒーローである「ブラックパンサー」が主役の映画ですね。

では、まず予告編を観ていきましょう!


「ブラックパンサー」予告編

黒人ヒーローとHip Hopが混じるクールな映画だということがわかりますね!

2018年にこの映画が出るというところもポイントです。

『ブラックパンサー』はこんな人にオススメ!

どんな人が『ブラックパンサー』を楽しめるか考えてみました。

・マーベル・コミックが好きな人
・ブラックミュージックが好きな人
・女性が活躍する映画が観たい人
・世界情勢に関心のある人

こんな感じ。

マーベル・コミックが好きな人、そりゃ観た方が良いです。オススメされる前に観に行ってるはず。

ブラックミュージックが好きな人。ここ大切! 作中での音楽はアフリカンミュージックがほとんど、パーカッシブで最近の80年代ミュージックを使った映画とは全然違う音作りをしております。

作中ではHip Hop、R&Bな曲も流れます。韓国のシーンではK-Popも流れたりと音楽との関わりも強い内容となっています。

そして、女性が活躍する映画を観たい人。女性の社会進出が叫ばれる昨今、うまくいっているのかいないのか。やきもきしている人も多いはず。

もっと女性の活躍する場はないの? そんなフラストレーション、『ブラックパンサー』で発散しましょう。女性陣、めっちゃカッコ良いです。

最後に世界情勢に関心のある人。ただのヒーロー映画と思うなかれ。人種差別、移民問題、貧困、侵略戦争を扱った超社会派ヒーロー映画なのです。

社会問題を扱いつつ、ヒーロー誕生を描いた本作、子供のいる人はぜひ親子で観に行っていただきたい。

ではネタバレを含んだ感想を載せていきますね!

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『ブラックパンサー』はライオン・キングかつ007かつスター・ウォーズ


出典:YouTube

『ブラックパンサー』の大枠のストーリーは「王位継承」です。爆破テロで亡くなった父ティ・チャカの息子である主人公ティ・チャラがワカンダ国の王になるお話。

常に家来を引き連れゆっくり歩いちゃ椅子に座る(正直モノマネしたくなるほどカッコ良い立ち振る舞い!)王子は甘やかされすぎ? なんて思いますが、これはライオン・キングのシンバですね。

王位継承完了〜かと思いきや、そこに現れるいとこのキルモンンガー! ライオン・キングでは叔父であるスカーがヴィランでしたが、『ブラックパンサー』ではいとこがヴィランなんですね。

本来王になるはずの息子が戦いに敗れ、這い上がり王座を勝ち取り真の王となる! まさにライオン・キング。

007的映像とガジェット


出典:YouTube

イギリスのスパイ映画『007』シリーズ的な要素もあります。

印象的なのはボンドカーならぬブラックパンサーカーなレクサス。地球最強の鉱石(架空)ヴィブラニウムで作られたボディは銃弾なんてへっちゃら。オコエ隊長が頬杖ついてるシーンは笑いました。

足音のしないスニーカーや無線機かつ盗聴器などなど007に出てきそうなガジェット盛りだくさん!

ガジェットだけでなくカジノでの絵作り、真っ黒なスーツを着こなす陛下の立ち振る舞いなど007を感じるシーンは多くありました。

スター・ウォーズのようなSF要素


出典:YouTube

砂が舞い上がるアフリカの大地に、発達した文明。まるでスター・ウォーズに出てくるタトゥイーンのよう。

近未来的な街中を走るリニアモーターカー、不思議な形をしたステルス飛行船、血筋のお話だったりとスター・ウォーズの世界観も感じれます。

銃を使わず槍や剣で戦うところもジェダイ感ありますね。

ライオン・キングで007でスター・ウォーズ。王位継承でスパイでSF、もうめっちゃ詰め込んでます。詰め込んでるのに、カッコ良い。すごい。

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『ブラックパンサー』で活躍する知的で強い女性たち


出典:YouTube

主人公やヴィランは男性ですが、活躍するのは男性だけではありませんよ。むしろ女性陣の方が知的でカッコ良い?

妹であるシュリちゃんはブラックパンサースーツを開発したり遠隔操作レクサスを操ったりする天才科学少女。兄思いの素敵な女性。

(古いタイプのスーツを見せたのち、2種類のスーツから選ばせるところなんかやり手フリーランスっぽくて独立してもやっていけそう)

ガジェット作りだけでなくラストではキルモンガーを追い詰めるところまでいくほど戦闘もいけます。めちゃめちゃカッコ良い。

そしてワカンダ王に仕える戦士、オコエ隊長! もうオコエ隊長強すぎ。

カジノでのアクションシーンでは槍をブンブン振り回し三国無双ばりのアクションしてくれます。あれ実際にやってるんだからすごいよね。

ブラックパンサーの守護者であり、指導者でもあるオコエ隊長。惚れます。

最後に陛下の(元から現)恋人であるナキア。スパイとして世界を飛び回り同胞たちを救う手助けをしているようです。

愛する国を救うために不利でも戦うと決断するナキアがいるからこそ陛下も活躍できるんですよね、最後のキスシーン熱いですよね。

危機的状況でも瞬時に判断を下す姿勢は見習いたいです。

『ブラックパンサー』で流れる音楽

映画『ブラックパンサー』は流れる音楽も一風変わっています。

今現在の多くの映画は80年代ポップミュージックを使うことがトレンドとなっています。

そんな中『ブラックパンサー』内では主にアフリカンミュージックが使われています。

80年代ポップスでもなくオーケストラでもない映画音楽。かなり斬新で面白いです。

加えて最新のHip HopやR&Bも使われていますね、これがまたクールでカッコ良いんだわ。

特に第1EDで流れる「All The Stars」の格好良さは異常。

Kendrick Lamar, SZA – All The Stars

砂で作られた黒いオブジェが流れる映像と共に聴くAll The Starsは鳥肌ものでした。

映画『スカイフォール』のOPで流れたADELEの「Skyfall」並みにしびれましたね。

インスパイア・アルバムというものも出ています。劇中歌の「All The Stars」「Opps」「Pray For Me」3曲入っていますね。

今のポップミュージックを語る上で外せない映画とも言えますね。

『ブラックパンサー』のヴィラン、キルモンガーの魅力


出典:YouTube

本作のヴィラン、キルモンガー。かなり魅力的ですよね。

ただの王座を狙う悪い奴ならここまでの魅力は出ません。その魅力はどこからくるのか?

キルモンガーの父、チャラの叔父であるウンジョブはスパイ活動を行う中でワカンダのやり方に違和感を感じ裏切ったという設定になっています。

裏切ったと言っても、ワカンダ人だけしか守れていないやり方に疑問を感じて行動した正義の人なんですよね。貧困とドラックにまみれたアフリカ生まれの仲間たちを救いたいと思った人だった。

そんな父を前王に殺され、貧しく育ったキルモンガーも、世界各地に散らばった同胞たちを救いたいと考えている人なんです。

救いたい気持ちが武力行使に向かってしまっただけであって、完全な悪じゃない。屈折してしまった愛の持ち主です。

ハーブを飲み先祖に会いに行くチャラは広大なアフリカの大地で多くの先祖の囲まれる。それに対しキルモンガーはカリフォルニア州オークランドの小さな部屋で、父親1人。

「父の死に対する涙は?」と言われ「人は死ぬ」と平気だと答えつつ、涙を流すキルモンガーに僕も号泣。

血統に敗れた際に父親との思い出を話すキルモンガー、号泣につぐ号泣。

今までのワカンダは閉鎖的だった、世界各国を救うために外に出るんだと唱えたキルモンガーの意思は、しっかりチャラに引き継がれました。

「国を守りたい」という意思、「世界に散らばる仲間を助けたい」という意思。

2つの意思が重なって真の『ブラックパンサー』が生まれたんです。泣けるぜキルモンガー。

『ブラックパンサー』と社会問題


出典:YouTube

冒頭でも言いましたが『ブラックパンサー』は社会派ヒーロー映画です。

今世界が抱えている問題をがっつり取り込んだ2018年の映画なんです。

奴隷と侵略戦争

『ブラックパンサー』内ではヴィブラニウムが貴重な資源として扱われていました。

アフリカ大陸は資源豊富な土地で、15世紀まではヨーロッパと対等に貿易を行うほど発展していたんです。ヴィブラニウムはその資源を指しているんですね。

その後ヨーロッパが労働資源不足が進み、アフリカの人たちを奴隷としてヨーロッパやアメリカ大陸に連れて行っちゃったんです。

キルモンガーが死に際に「海に投げてくれ。先祖たちは鎖に繋がれることより船から身を投げることを選んだ」と言っています。

これは奴隷として船で連れ去られた人たちのことを言っているんですね。道具として生きるのではなく人間として死にたいと。誇りを持ってキルモンガーは死を選んだんです。

そんなキルモンガー登場のシーンではイギリスの美術館でヴィブラニウムが出てきますよね。これは力づくで奪われたものだから、俺も力づくで奪うと発言しています。

19世紀にはヨーロッパ各国によるアフリカ侵略も始まります。奴隷貿易が禁止されたため、侵略して植民地にしたいと考えたのです。資源も労働力も手に入りますから。

美術館に飾られていた品々を説明させているのは、すべて奪ってきたものだからですね。キルモンガーはわかって質問していたんです。

韓国でのカジノシーンでナキアが問題を起こしたと言われていましたよね。象牙商人とトラブルになったと言っているのも、アフリカの資源を他国に奪われたという背景があるからなんです。

奴隷と侵略によって力を失い各国に散らばったアフリカの人々。

その人たちはよそ者だとして救おうとしなかったのが前王までのワカンダ国です。キルモンガーはそこに反発して行動を起こしたんですね。

移民問題

チャラが各国の同胞たちをワカンダに連れてきたらどうだと提案した際に「移民を受け入れると問題が起こる」と反発されました。

これは今世界的に起こっていること。他の民族、他の文化を受け入れることで起こる問題を指しています。

同じアフリカ系だったとしても住んでる土地が違えば文化、考え方も違う。その摩擦は必ず起こるものです。

その摩擦は時に争いになることも。それがわかっているのに、放っておくのか。それとも摩擦を恐れず手を差し伸べるのか。

そんな問題も扱っているんですね。最終的にチャラは手を差し伸べることを選びます。

人種差別

人種差別については映画全体を通してほぼ黒人だったのであまり出ては来ませんが、ここまで主要キャストを黒人で固めたということ自体が差別に対抗する姿勢だと言えますね。

主要キャストの中で白人はロスとクロウのみ。

逆にロスはジャバリ族のリーダーであるエムバクに「お前は何も言うな、次口を開いたら子供に食わす」と脅されます。

多くの白人の中で黒人は(或いは僕のような黄色人は)差別されてきた、その逆もです。今も起こっていることです。

チャラは映画最後の演説でこう言います。

「危機に面した時、賢者は橋を架ける。愚者は壁を築く」

今アメリカとメキシコの間に壁が築かれそうになっていますよね。あれのこと言ってますね。

壁ではなく、手を取り合っていこう。言葉や文化、肌の色が違っても摩擦が起こっても、手を取り合い助け合っていこう。そんなメッセージがあると僕は感じました。

銃社会

韓国でのカーチェイスシーンにて銃弾を浴びるレクサス。車内でオコエ隊長が「銃なんて古いもの使って」と言いますよね。

あれは古いものを使って、古い考えでダサいってディスっているんですね。

え、じゃあ槍はいいの? 銃社会じゃなくて槍社会ってこと??

いいえ、もちろん違います。

オコエ隊長やチャラ陛下が最後に手に取った武器は「対話」です。

演説にて「農業国に何ができるんだよ」と口撃された際にも「笑顔」で対応。

摩擦と偏見に対して武器を持って戦うのではなく笑顔で対話していくのが正しい道だと示してくれました。

最後のチャラ陛下の笑顔、しびれますよね! 僕たちもあのような振る舞いができるようにならなければ。

そんなメッセージが詰まった社会派ヒーロー映画なんです。

↓GANOが作った作曲ツールです!↓
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最後に

2018年、今観るべきヒーロー映画でした。

できれば多くの子供たちに観てもらいたいですね。偏見を持つ前の純粋な心で陛下に憧れ、立ち振る舞いと考えを真似てほしい。

そうすればきっと、彼らが大人になる頃にはもっと良い時代が来る。そう思います。

GANO

対比するようなこの映画



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    作詞曲家・DTMer・WEBライター。DTMを中心に歌モノ・BGMを制作しています。シティポップ系やブレイクビーツなどを好んでます。
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